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外出先で気軽に利用できるスマホやタブレットですが、自宅で快適なネット環境でWi-Fi接続して利用する方も多いことでしょう。

そこで重要になってくるのが無線LANの国際標準規格である『IEEE802.11』。

端末の仕様やスペックをみると、IEEE802.11 a/b/g/nやIEEE802.11 a/b/g/n/acなどの表記があるものの、

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アルファベットの違いがイマイチよくわからない…

そんな悩みを解決すべく、電波(周波数)の特性から通信規格の違いまで詳しく解説していきます。

無線LANの国際標準規格IEEE802.11の規格一覧(最大通信速度/周波数帯域)


出典:総務省(日本における電波利用の現状)

通信規格 最大通信速度 周波数帯域
2.4GHz 5GHz 60GHz
IEEE802.11 2Mbps
IEEE802.11 b 11Mbps
IEEE802.11 a 54Mbps
IEEE802.11 g 54Mbps
IEEE802.11 n 600Mbps
IEEE802.11 ac 6.9Gbps
IEEE802.11 ad(WiGig) 6.7Gbps
IEEE802.11 ax 9.6Gbps

周波数帯域(2.4GHz/5GHz/60GHz)の特徴(メリット・デメリット)

出典:総務省(周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴)

日本では電波の特性に応じて、帯域ごとに周波数(波長)が割り当てられ、様々な用途に活用されています。

  • 3KHz~30KHz:超長波(VLF:Very Low Frequency)
  • 30KHz~300KHz:長波(LF:Low Frequency)
  • 300KHz~3MHz:中波(MF:Medium Frequency)
  • 3MHz~30MHz:短波(HF:High Frequency)
  • 30MHz~300MHz:超短波(VHF:Very High Frequency)
  • 300MHz~3GHz:極超短波(UHF:Ultra High Frequency)
  • 3GHz~30GHz:マイクロ波(SHF:Super High Frequency)
  • 30GHz~300GHz:ミリ波(EHF:Extra High Frequency)
  • 300GHz~3THz:サブミリ波

波長が長いと電波の直進性が弱く、情報伝送容量が小さい反面、障害物の影響を受けにくいため、電波を遠くまで伝えやすい特徴があります。

波長が短いと電波の直進性が強く、情報伝送容量が大きい反面、障害物の影響受けやすいため、電波を遠くまで伝えにくい特徴があります。

使用される帯域は、2,4/5GHz帯が20MHzのチャネルに、60GHz帯では2.16GHzの広域チャネルに分割されています。

  1. 2,4GHz帯:13チャネル
  2. 5GHz帯:19チャネル
  3. 60GHz帯:4チャネル

2.4GHz帯(極超短波)の特徴(長所と短所)

転送レート 低い※
安定性 障害物に強い
電波干渉 影響を受けやすい

※1ストリームあたりの転送レート(MIMO除く)

2.4GH(極超短波)は、情報伝送量が大きく障害物に強いバランスの良い周波数帯域ということもあり、多種多様な移動通信システムに利用されています。

周波数2.4GHz帯域(300MHz~3GHz)の主な利用用途:

  • 携帯電話
  • 業務用無線
  • 地上デジタルTV
  • 空港監視レーダー
  • 電子タグ
  • 電子レンジ
  • Bluetooth

・・・など

隣接するチャネル間の影響を受けやすいうえに、他の電子機器(通信機器)との干渉が起こりやすい特徴があります。

プラチナバンドは携帯電話で利用する周波数帯の中でも、比較的低い周波数帯(700~900MHz帯)を使っているため、繋がりやすいとされています。

参考大手キャリア(携帯電話)の対応バンド(周波数帯域)

5GHz(マイクロ波)の特徴(長所と短所)

転送レート 高い
安定性 障害物に弱い
電波干渉 影響を受けにくい

※1ストリームで433.3Mbpsの高速通信が可能

5GHz(マイクロ波)は、伝送できる情報量が大きいため、電波の直進性が有効活用できるシステムで利用されています。

周波数5GHz帯域(3GHz~30GHz)の主な利用用途:

  • 衛星通信
  • 衛星放送
  • 無線LAN
  • 気象レーダー
  • 船舶用レーダー

・・・など

隣接するチャネル間の影響を受けにくい反面、直進性が強い分、極超短波と比べると、障害物の影響を受けやすくなります。

60GHz(ミリ波)の特徴(長所と短所)

転送レート 極めて高い
安定性 障害物に非常に弱い
電波干渉 影響を受けにくい

※1ストリームで5Gbpsの高速通信が可能

60GHz(ミリ波)は、さらに電波の直進性が強く、伝送できる情報量も非常に大きいです。ただし障害物(悪天候時の雨や霧など)の影響を大きく受ける特徴があります。※比較的短距離での無線通信向き

2.4GH(極超短波)や5GHz(マイクロ波)と比べると、まだまだ利用が進んでいないことから、次世代の大容量転送技術としての活用に注目を集めています。

※Qualcomm社のSoC『Snapdragon 835』で一部の機種が利用可

同じ周波数帯域(2.4/5GHz帯)で規格間の最大通信速度が違う理由とは?

単に周波数帯域の違いだけでなく、規格ごとに転送技術も飛躍的に向上しています。

  1. チャンネルボンディング
  2. MIMO(通信の多重化技術)
  3. 変調方式の多値化
  4. フレームの多重化

・・・など

通信速度は規格以上にMIMO(ストリーム/アンテナ数)に注意が必要

IEEE802.11nの最大通信速度
ストリーム数 転送レート
1ストリーム 150Mbps
2ストリーム 300Mbps
3ストリーム 450Mbps
4ストリーム 600Mbps

※チャネルボンディング適用時:40MHz(20MHz+20MHz)

LTEのキャリアアグリゲーション技術(CA)のように、IEEE802.11nではチャネルボンディング技術を適用することで、複数のチャネルを束ねて周波数幅を広げることが可能です。

さらに、IEEE802.11nでは通信の多重化技術(MIMO:Multi Input, Multi Output)により、最大4つのアンテナで4空間ストリームが可能です。そのため、1つのアンテナで構成するSISO(Single-Input Single-Output)に比べると、約4倍の通信速度となるのです。

つまり、同じ通信規格であるIEEE802.11nの中でも、対応するストリーム数によって約4倍程度の大きな通信速度差が生じるのです。

IEEE802.11acはビームフォーミング対応(MU-MIMO)の有無が重要

IEEE802.11acでは最大8つのアンテナで8空間ストリームのMIMO通信が可能なため、より高速な通信が可能です。

ちなみにIEEE802.11acの場合は、従来の時分割多重『SU-MIMO(Single User-MIMO)』から空間多重『MU-MIMO(Multi User-MIMO)』に技術革新(ビームフォーミング技術との融合)したことで、『1対1』から『1対多』の同時通信が可能となっています。※受信側の端末がビームフォーミングに対応する必要あり

IEEE802.11axは変調方式とMU-MIMO+OFDMAの組合せで高速化

IEEE802.11axでは変調方式が1024QAMまで使用できるため、11acの256QAMと比較して高速な通信が可能となっています。

さらにIEEE802.11axには、MU-MIMOにOFDMAを組み合わせることで、ネットワークが混雑している状態でも通信速度が向上する技術が導入されており、実効速度の改善にも期待が寄せられています。

IEEE802.11axはまだドラフト版という位置づけですが、理論上では600Mbps(80MHz/1ストリーム)、9.6Gbps(160MHz/8ストリーム)でのデータ送信が可能となっています。

通信規格IEEE802.11規格の長所と短所まとめ

基本的には電波の特性上、波長が短い(周波数が高い)ほど直進性が強いため、転送効率が良く通信速度が速い反面、障害物に弱く遠くまで繋がりにくい特徴があります。

周波数 安定性・繋がりやすさ 最大通信速度/1ストリーム
2.4GHz ★★★★★ ★★★
5GHz ★★★★ ★★★★
60GHz ★★★ ★★★★★

ただし通信規格が利用している電波の周波数の特性以上に、転送技術の違いが通信速度に大きく影響を及ぼします。

違う通信規格はもちろんのこと、同じ通信規格内でも対応するストリーム数(アンテナ数)や、ビームフォーミング技術の対応状況など、利用する端末(親機/子機)の条件についても注意しましょう。